朝井リョウ「死にがいを求めて生きてるの」
4月7日
平成を代表する作家である朝井リョウが平成について書く。そう知った時あああ読みたいいいと強く思ったがなかなか単行本を買うお金が手に入らず、読み損ねていた。
ついに!
バイト三連勤した甲斐がありました。
朝井リョウさんの本は「個性」ということについて書かれていることが多い気がする。直接的でないにしても間接的に。
それは平成を生きる私たちがことさら「個性」を求められるからなのかな
就活していて思うのがどこの企業も個性個性個性個性、個性重視です
個性を探すことが就活なのか、と思うほど個性
そんなに特筆すべき個性私になくて、ずっと就活中に思っているのだけど、一週間に一冊本が変えて一本の映画が見れるだけのお金があればそれでいいのに。
ただこの願いさえも今の日本では贅沢な願いなのかもしれない。
すぐ就活の話題になってしまうのが就活生の良くないところだと思う。
一章目の白井友里子の話が怖かった。
「日勤、深夜勤、準夜勤、休日。友里子の日々は、この四日間の塊が連なって出来上がる。この塊の連鎖にしがみついていれば、あとはくるくる、自動的に季節が巡って行く。」
「四日前も、全く同じ時間に、全く同じ時間で、全く同じことを考えていた。そんな気がする、という曖昧さを許せないほど、確実にそうだった実感がある。自動的に、運ばれている。」
毎日毎日毎日電車に乗って会社に行って朝から晩まで仕事して疲れて帰ってご飯チンして買ってきた惣菜と一緒に食べて、疲れてテレビつけながらTwitter見て、あ、お風呂入んなきゃって思ってお風呂はいってまたTwitter見てああそろそろ寝なきゃ、と思い寝る。また起きて電車に揺られて会社行って仕事して、
気づいたら30歳だった
なんてことが今一番ホラーだと思ってる怖い。そして恋人もおらず自分一人。大学の友達ももうそれぞれの道を歩んじゃってて、今更連絡取れなくて、でも社会人になってから新しい友達もできなくて。
咳をしても一人
ということをこの章を読んでいて考えてしまった。朝井さんなら白井友里子を主人公に一冊の小説がかけると思う、というか絶対面白いのでぜひ書いていただきたい。
「何者」であれだけ「個性」を武器に戦ってそしてSNSで誇張して匿名に甘えて頼って、正体がバレてそして就活失敗して、でもなんとか就職できて
そしていざ社会に出たらこんな闇が待っていましたよ
っていう小説を書いて欲しい。あんなに血を流しながらした就職だけど、あんなにも望んでいた会社なのに、待っていたのはただ歯車に乗るだけの毎日毎日同じことの繰り返しの、
みたいな絶望的な小説を書いて欲しい。絶対に面白い。
この本も怖い本だった。生きがい生きがい言っているけれどそれ死にがいなんじゃない?と後ろから刺されるような感覚で、そして表面だけなぞってちょっと知っている知識だけでさも自分は全て知っています、みたいな顔して世界をかえるなんて叫んでいるけど本気で何も学ぼうとしていない大学生を後ろから刺すような本だった。雄介は誰の中にも存在している気がする。
人間誰しも「生きる意味」が欲しい。
誰かにあなたがいてくれてよかった、と思って欲しいし何か成し遂げている、という達成感を味わいながら日々を生きたいと思ってる。
「手段と目的が逆転してる」
というのは割と良く見ることなのかもしれないしそれに気づいたときの自分の浅ましさたるや。
本当にこういう怖い本を書く朝井さんが本当に好きだ。
何度も繰り返し読みたいと思う。
この本を読み終わり、怖い本だと思いながら皆の感想が気になってTwitterで検索したらすごいいい言葉が出てきた。
「読者に第三者でいることを許さない朝井リョウが投げてくる言葉のナイフに満身創痍になりながらもページをめくる手が止まりません」という三省堂書店成城店のこの本に掲げられているポップの言葉だ。
「読者に第三者でいることを許さない」って、すごい朝井リョウの作品全般に言える言葉だと思う。すごいぴんと来る、スパッとハマる言葉でとても心地よい。
こんな風に言い当てれる語彙力が欲しいな、と望んだ。
ここから完全に私ごとになってしまう
そんな風に語彙力が増やしたくて、このブログを始めた。
自分の中に溜め込むことは得意だが発信していく力がない。
就活をしていて気づいた自分の欠点の一つだ。
そして私は記憶力がめちゃめちゃに悪い。
単純に本を読んだということを忘れないための備忘録というのも、このブログを始めた理由である。
そして誰かが私の言葉に反応して、私はこの本を読んでこんな感想を持ちましたよ、とそんな言葉をくれたなら、こんなにも嬉しいことはないだろう。
「知らない人」と「繋がる」ということを私はまだ経験したことがない。
せっかくこんなにSNSが発展している今に生まれたのだからその時代を生きなければ。そんな思いもある。あと単純にパソコンのキーボードを打つのが好きだ。
そんな理由で初めてみました。
三日坊主な私だが続けて行こう、と思っている。